ニッポンの技は、いとステキ!

第3回 江戸小紋

岩下 江美佳

岩下 江美佳(Emika Iwashita)

1973年、東京生まれ。美大卒業後、富田染工芸に入社。
2007年、東京染小紋伝統工芸士認定。08年独立。
現在、伝統的な東京染小紋とオリジナルブランド「粋凛香(すいりんか)」制作。

きもの女子へひと言
着物を着たときの特別な気持ちを是非味わってほしいです

渋さこそ究極の贅沢 江戸前のシンプルシック

渋さこそ究極の贅沢 江戸前のシンプルシック

「文化や伝統を頭の片隅に置きながら、着たときに特別な気分になれるのが、着物の魅力。それに、洋服は流行があってシーズンごとに変わっていくけれど、着物のペースはもうちょっとゆっくりな気がするんですね。だから、長く着ていただけるおしゃれなものを作りたい」と、岩下江美佳さん。東京染小紋の世界に新風を吹き込む職人です。

東京染小紋の一種、江戸小紋として伝わるのがこれらの文様

シンプルで、シック。東京染小紋の魅力は、これに尽きるでしょう。渋い色味、幾何学的な小文様。派手さを抑え、身にまとう人の個性を引き立ててくれる、頼もしい存在です。 そのルーツは江戸時代、武士が身につけていた裃。この小紋柄が庶民のファッションとして大流行したのです。やがて幕府により華美な身なりが禁じられると、今度は色味を抑え、無地と見まごうばかりの細かい柄でさりげないおしゃれを楽しむようになって......東京染小紋の一種、江戸小紋として伝わるのがこれらの文様です。江戸っ子たちのおしゃれ魂、いやはやあっぱれ。

細かい文様は型染めによるもの

細かい文様は型染めによるもの。柿渋紙でできた伊勢型紙を生地に当て、天然糊を駒べらで置きます。型紙には模様が彫り抜かれているので、この生地を地色染めすれば、糊つけした部分だけ白く染め抜かれる、というわけ。また、糊に染料を混ぜれば、型紙の模様通りに染まります。

江戸小紋のほか、型友禅、更紗とさまざまな技法を用いた東京染小紋を制作

岩下さんは、江戸小紋のほか、型友禅、更紗とさまざまな技法を用いた東京染小紋を制作しています。キレのよさは江戸小紋で。少し色っぽさを出したいときには型友禅などに使うすりぼかしを施して。「私はただ、昔から伝わってきた技法を受け継がせてもらっただけ。その技を使って、お客様が喜んでくださるもの......景色や街になじんで、身につけた人を輝かせる着物を作るのが、私の仕事だと思っています」